1-2.腕時計の電池交換(’24.09.15)
《SEIKO 7559-601A》
こんな言い出しだと、おおよその年齢推定が可能になってしまいますが、高校入学時のお祝いとして購入してもらった腕時計です。既に電池切れであることは認識していましたが、なかなか出番が無いので放置状態でした。最近、仕事で秒針のついている時計が必要となり、急遽引っ張り出しました。懐かしいと同時に汚い…。下の写真が今回対象の『SEIKO 7559-601A』です。


秒針はオレンジ色だったはずですが、色が褪せて長針と短針に近い白色に近づいています。ライト付きでしたが、購入して3年も経たずにライトが点灯しなくなってしまいました。修理に出しましたが、リューズも曲がっており修理が無理(?)だったか、難しいと言われて断念した記憶があります。高校時代、授業中に机の上から何回か落ちたことが原因だったと考えられますが、使用するには特に問題がなかったため、そのまま使用し続けていました。その後、数年すると安価なデジタル時計が広まり、徐々に出番も減っていったのだと思います。
それでも、使っている間は当然電池交換も何回かしています。時計屋さんで1回の交換は大体1,600円程度だったでしょうか。今でも値段はそれほど変わらないかもしれませんが、ピーク時はカメラ屋さんやホームセンター、デパートの一角に出店している店舗では、電池交換が700円を切っていたこともありました。しかし、そういう安い店舗で電池交換すると、すぐに電池が無くなってしまう傾向にあり、短期間でまた交換する羽目になったものです。今考えれば、長期保管していたような使用期限が近い電池を使っていたので安かったんだろうと容易に思いつきます。あの頃は、自分で腕時計の電池を交換してみようなんて思いもしませんでした。
作業に入る前に確認です。腕時計の裏面を見ると裏蓋の外周に均等のくぼみがあります(上右写真)。これはスクリュー式と呼ばれている裏蓋で、これ以外にも下のようにいくつかの種類があるようです。電池交換をする裏蓋の種類によって使用する工具が異なりますので注意が必要です。
今回の最高知識
腕時計の裏蓋タイプ
①スクリュー式 | 今回の電池交換をするタイプで、専用工具で蓋を開閉します。 |
➁ネジ式 | 裏蓋の四隅がネジで止められているタイプで、近年ではほとんど見かけられないようです。精密ドライバーさえあれば最も簡単に開閉ができる。 |
③こじあけ (はめ込み)式 | ネジや溝が無く、時計に密着。我が家にありましたので試しに開けてみましたが、開けるのも閉めるのにも固くて苦労しました。裏蓋閉め器があった方が無難です。 |
今回の腕時計はスクリュー式の裏蓋です。電池交換に必要な工具は最低限、専用のオープナーが無ければ話になりません。工具を使わない方法としてゴムボールを利用するというやり方も紹介されていましたが、対象品は古いものなので、開けにくいはずであると推測されるので当然却下(念のため実施してみましたが、推測通りの結果でした)。また、工具自体を自作された方もおりましたが、そこまで手をかけるつもりもなかったので、工具の購入を選びました。
裏蓋オープナーなんて一般家庭に常備している品ではないので、当然のように新規購入するしかありません。早速アマゾンさんで検索をかけます。相変わらずほぼ中華製品の嵐で50件近くが表示されますが、いい加減な商品では絶対に腕時計を傷をつけると考え、怪しい商品を除外検索します。すると、表示は「一致する商品はありませんでした」とさ。この工具は国産品を探すと6,000円以上しますが、頻繁に使うものでもない物にこれだけの金額をかけるべきか悩むところです。やむを得ず中華製品の(比較的信用できそうな)レビューを巡って何とか使用に耐えられそうな商品を選んで購入(2024.9 アマゾン \1,398)した物が下の写真になります(TSUCIA 側開器 オープナー 腕時計 裏蓋開閉工具 2爪式側開け器)。


当初は、様々な種類に対応するオープナーセットを購入しようかとも考えましたが、精密ドライバーは持っているし、こじあけ式も使い道のない粗悪品の5徳用ナイフで対応できることもわかりましたので、スクリュー式オープナーに絞ることにしました。固定台座などの購入も検討しましたたが、質の悪そうなものばかりで、レビューを見ても使い物になりそうもありません。あとは何とかするとして、結局、新たに購入した商品はこれ1点のみでした。このタイプの工具も2爪式と3点支持がありましたが、調べたところ、2爪式の方が作業しやすいとのことだったので、この商品に決定です。
さて、これから裏蓋を開ける作業に入りますが、この時点では、まず、裏蓋を確実に開けられるかということと、腕時計に使用されている電池の型番を確認するということが主な目的です。交換用の電池は確認後に注文することにしますので、蓋を開いたら一旦閉じることにします。では、開始です。
自分で腕時計の電池交換をするサイトを見ると、スクリュー式の場合は時計に傷をつけないためにオープナーと時計の間にビニールなどを1枚挟むことを推奨していますので、その通りにします。オープナーは使用中にずれないようしっかりと爪幅を調整します。そして、ゆっくりと慎重に反時計回りに回して…って、ここでちょっと問題が発生(1回目)。やはり腕時計本体の固定が必要です。回せません。想像していた通り、ちょっと固い。でもアマゾンで見た固定台座は購入しようとは思いません。サイズから推測しても多分、使い物にならないでしょう。もっと大きな万力のようなものがあればと考えたところ、代用できそうなものがありました。バイスの付いた作業台🤩

作業中にずれて時計に傷をつけないようにビニールを挟んでオープナーの爪幅をしっかりと調整します。しかし、そこそこ年季の入った時計は固定しないと蓋を回すのはやはり困難でした。

作業しやすいように、金属製ベルトのバネ棒を1本はずします。腕時計には余分な傷をつけたくないので、バイスにタオルをかませてから、ほどよい力で挟みます。

腕時計が固定出来たら、オープナーの爪幅を調整って…というところで再度問題発生!(2回目)

オープナーの爪が届かん…いや、工具を差し込む位置を変えれば届かなくもないが、それでは可動範囲があまりにも狭すぎる。

ちょっと考え込んで、『あぁ、嵩上げすればいいか』ということで、端材を下に敷きます。

再固定しました。さあ、これで爪は届くはずです。裏蓋が回せるかな?
爪は届きましたが、バイスの黒い固定具が微妙に柔らいため、腕時計をガッチリ固定することができません。よって、裏蓋と一緒に時計全体が回ってします。またまた問題発生(3回目)?これでは裏蓋は開きません。
かなりガッチリ固定しないと裏蓋が回らないような感触です。仕方なく固定具なしで作業台に直接挟むことにするしかなさそうです。傷防止のためのタオルも固定の障害になりそうなので取り外しました(下左写真)。万が一の落下に備えて、クラフトテープで作業台の裏から腕時計のベルトを貼り付けました。(下右写真)。


ビニールを忘れずにオープナーの爪幅を調節、再々度ゆっくりと慎重かつ確実に回します。すると思っていたよりも少し楽にオープナーが回転してくれました(これだけ固定すれば当然かもしれません)。

祝!開蓋😂
あれっ?パッキンが入っている。
あぁ、そういえば日常防水だったね。
変形して3箇所切れていますが、パッキンが入っていました。日常防水だったことをすっかり忘れていました。ということは、交換用電池のほかにパッキンも取り寄せないといけないってことですね。水を扱うときには時計を外せばいいのかもしれませんが、せっかくの機能ですし、このへんはケチらないで揃えることにしてみようと思います。交換する電池はSR43SWだと確認できましたので、一旦裏蓋を戻して、揃えなければならないものを準備します。
今回の最高知識
電池の一般名称について
ボタン型電池の規格は、コイン形の表示法に似ており、[層数][電池系][形状][寸法]の順で表されます。最初の[層数]は、内部に複数の電池が直列につながれている電池(積層電池)のみに付けられるようで、単電池には何もつけないそうです。ちなみに、積層電池の場合は電池数を表す数字が付くとのこと。ここでは無視してよさそうです。
今回使用する”SR43SW”を例にとると
・[電池系]の”S”は、酸化銀電池を表す。
・[形状]の”R”は円形を示すようですが、ボタン型電池では常に”R”だそうです。
・[寸法]は、基本的にコイン形リチウム電池の表し方と同じで、型前半2桁が直径(mm単位)、後半2桁が高さ(0.1mm単位)を表しますが、以下のように固有の記号が定められている寸法もあるようです。
(ボタン型電池 出典: フリー百科事典『ウィキペディ(Wikipedia)』)
今回使用する”SR43SW”の他にも”SR43W”、さらに数字の後に何もつかない”SR43″という3種類の電池が存在します。”SR43SW”の数字以下に表示されている英文字の”SW”とは、一体何を表すのでしょうか? さらに調べてみると、先に述べた表示法にはさらに続きがあり、寸法の後にも[電解液区分][用途区分][補助区分]という区分があることが分かりました。日本時計学会誌 No.121(1987)
・[電解液区分]は、水酸化ナトリウム水溶液使用の電池のみに記号”S”を付け、水酸化カリ
ウム水溶液使用の電池には記号を付けない。
・[用途区分]は、この規格を満足するウォッチ用電池には、記号”W”を付けてもよい。
・[補助区分]は、必要に応じて電池の区分を行う。
よって、この3種類の表示の違いは、以下のように解釈されます。
・SR43″W”は、電解液に『水酸化ナトリウム水溶液』を使用しているウォッチ用電池
・SR43″SW”も電解液に『水酸化ナトリウム水溶液』を使用しているウォッチ用電池
・”SR43″は、電解液に”SR43W”と同じ『水酸化カリウム水溶液』を使用しているが、
ウォッチ用電池の規格を保証しない
さらに付け加えると、”SR43W”はバックライトやアラーム機能などが付いたデジタル時計に適している強電流タイプで、”SR43SW”は針だけを動かすアナログ時計の使用に適している弱電流タイプ、”SR43″は時計以外の機器に使用する電池だということです。以上から、”SR43SW”は、『直径11.6mm、高さ4.2mmの円形酸化銀電池でウォッチ用電池弱電流タイプ』ということになります。
ちなみに、”W”の電池を使用するデジタル時計に”SW”の電池を使用すると正常に機能しなかったり、時計が動かないなどの不具合が生じる可能性があるようです。また、電池のパッケージ等に記載されている使用推奨期限は、使用を開始するまでの推奨期限のようです。記載された期限で使用できなくなるという意味ではないそうです。
腕時計の電池はすぐに購入手続きを済ませましたので、パッキンの確認と価格調査です。昔のカタログがあれば電池の型番くらいは載っている可能性がありますが、いくら何でもパッキンサイズの情報まではないと思いますので、現存のパッキンから推定するしかなさそうです。劣化して切れたパッキンを合わせてサイズを推定します。φ30.0mm?いや30.0mmを切っているか?太さは0.5mmか?概ねそんなところです。腕時計の裏蓋のφを正確に測ればいいのですが、ノギスがありません。定規で慎重に何度も測りますが、φが29.5mmか30.0mmなのか微妙で正確に判断できません。ここでノギスがあったらな~と思いますが、毎回こんなパターンなので購入するタイミングを失っています(でも、裏を返せば何とかなっているってことですね)。とりあえず、アマゾンで腕時計パッキンで確認してみます。すると、ゲゲッ!100とか200単位の販売かね。私は時計職人ではないのですが…。1個のみの販売も無いことはないのですが、ほんのわずかで、サイズも合いそうにもありません。少ないものでも5個単位の販売ですか。1度交換すれば次回の電池交換までの間は必要ないと思いますし、余分に購入しても、次回の交換時には劣化している可能性があります。交換が必要ならば、そのときに改めて購入すれば十分でしょう。2個なら購入しますが、5個もいらない。無駄な出費は極力抑えるということで他を探してみることにしますが、パッキンについて調べていたら、合わせてシリコングリスも必要との情報が得られました。シリコングリスは、パッキン取付け時に摩擦を低減させ、劣化を抑える役目があると同時に、蓋のネジ溝にも塗布すると嚙んだりしないという効果があるそうです。高額なものでもないので合わせて購入するとしましょう。グリスを塗る際には”塗布器”なるものも存在するそうですが、以後の出番が少なさそうなので見送ります。
まず、パッキンについては、すぐに時計部品と工具を販売している専門店を発見。パッキン1個からの販売もOKの有限会社 岡山時計部品センター(https://watchparts-and-tools-okayama.co.jp/)さんです。さすが専門店。パッキンのサイズは、大雑把に計測していたら判断に困るほど豊富です。実際、今回必要なパッキンのφが29.5mmと30.0mmのどちらかで悩んでいましたが、後々まで悩み続ける始末でした。最終的には、『使用後のパッキンは劣化して伸びている』と『取り付ける実サイズより気持ち小さめ』という自論から判断して、φ29.0mm(太さ0.5mm)を選択して注文です(2024.9 有限会社 岡山時計部品センター \420【送料\200込み】)。
続いて、シリコングリスの検索です。私の場合、通販やヤフオク等で重視するのが ”送料” です。高い安いは当然ですが、無料であればそれに越したことはありません。ですから、アマゾンさんをよく使いますが、それと合わせてヨドバシドットコム(https://www.yodobashi.com/)さんも並行してよく利用しています。何といっても『消耗品も1品からでも配達料金無料』というのが魅力です。今後も引き続き頑張っていただきたいものです。
シリコングリスを使用する機会は、『あまりない』と断言できる程ですので、開封したら多分数年単位で使用することはないでしょう。今回使用する分だけあれば十分という感じです。保管についてはネットで、開封済みの常温保管5年程度でも変化が感じられなかったという経験談もありますが、ごく少量でよいという条件で3つほどに購入候補を絞ることができました。最終的には”A1028 [白光 シリコングリス 5G]” を注文しました。 半田ごての白光(https://www.hakko.com/japan/)さんです。MADE IN USA(2024.9 ヨドバシドットコム \300【送料無料】)。

注文品が届きましたが、うっかり撮影前に作業を進めてしまいました。抜け殻のような写真になってしまい申し訳ありません🙇
・電池(SR43SW)
・パッキン:29.0(0.5)mm
・シリコングリス:5g
数日後、電池、パッキンとシリコングリスが届きましたので、早速取り付けてみます(上写真)。パッキンにグリスを塗って、裏蓋にセットします。新しい電池を入れたら裏蓋を閉めます。締め続けていたら…様子が変です。パッキンが歪んで偏りながらネジ山の溝に取り込まれていきます。一旦裏蓋を開いてみます。サイズが適合していなかったのでしょうか、パッキンが切れています(問題発生4回目)。もう一回り小さいサイズだったのか?それとも太さが足りなかったか?🤔 劣化後とはいえ、何かしらの手掛かりはつかめるかもしれませんので、もともと入っていたパッキンを確認してみます(捨てなくてよかった)。太さに偏りが生じています。もしかしたら太さは0.5mmではなく、1.0mmだった可能性があります。無駄になってしまいましたが、切れてしまったものは仕方ありません。授業料と考えましょう。再発注することにしますが、φ29.0mmだと少し小さかったような感覚です。サイトを確認するとφ29.5mmもあります。ここでもまた悩みましたが、結局、φ30.0mm、太さ1.0mmを改めて注文します。余談ですが、パッキンのサイズ特定は、内径で合わせるパターンと外径で合わせるパターンがあるようで、それに加えて太さで密閉性が異なるそうです。これは専門の方でも結構悩むようですが、強いて言えば『内径で合わせることが多い』ようです。

再注文品が届きました。今度は作業前に撮影しました。
・パッキン:φ30.0(1.0)mm
2回目のパッキンが届きました(上写真)。ヘラと指を使ってシリコングリスをパッキンにまんべんなく塗り付け、裏蓋に取り付けます(下左右写真)。


オープナーを使って、裏蓋を閉めていきます。若干、パッキンが歪み気味になりますが、修正しつつ、程よい力加減で閉め終えます(下写真)。φ29.5mmでもよかったかもしれません。

作業を完了して、裏蓋を閉めた状態です。パッキンの黒い部分が均等にわずかに見える程度にしました。まあ、こんなもんでしょう。閉め過ぎも良くないようです。
最後に、今回の作業に要した工具・部品類等を確認しておきます。
・裏蓋オープナー
・バイス(作業台)
・ビニール片・タオル等
・電池(SR43SW)
・パッキン(29.0×0.5)
・パッキン(30.0×1.0)
・シリコングリス
新規購入品
既存品
既存品
新規購入品
新規購入品
新規購入品
新規購入品
\1,398【送料\0】
-
廃棄品等利用
\327【送料\0】
\220【送料\200】
\220【送料\200】
\300【送料\0】
合計:\2,465【送料\400】
総計:\2,865
この腕時計が動くのも何十年ぶりでしょうか。仕事で必要になったとはいえ、再び腕にすることになってちょっとした感動と妙な充実感(計4回の問題発生のため?)があります。まさに”priceless”といったところです。
その後の経過
稼働後、数週間経ちますが、毎日曜日が合わなくなります。最初は、半日ずれて設定されているだけだと思ったので、12時間のずれを調整しましたが、状況は変わらず。曜日が逆転しているような気がします。通常であれば日・月・火~と曜日が進むはずですが、どうも日・土・金~と変わっているようです。リューズを2段階引き上げ、針を動かして曜日の変更を試みました。すると、曜日が変わりかけるところで何かに引っかかっているような感じで、元に戻ってしまうという現象が見られました。日付表示の故障原因については以下が考えられるそうです。
・強くぶつけたり、落とすなど強い衝撃により歯車が破損
・経年劣化による油切れで、ちりやほこりを引き寄せて歯車の動きに不具合が発生
・日付変更禁止時間帯(20時~4時)に日付変更を行い、歯車が破損
(故障ではありませんが、頻繁に手動で日付調整を行うと一時的な引っ掛かり等で切り替わらないこともあるそうです。)
日付表示の故障であれば素人には全く手出しができませんが、曜日の設定に不具合があるだけで、それ以外は問題なく動いています。とりあえずは、もうしばらく経過観察してみようかと思います。